素材選びから製品までを帽子作りの物語として考え、テーマをイメージし、デザイナー自らがデザイン画を絵描くだけでなく、自分でパターンを引き、自分でミシンを掛けサンプルを作り、現場に入り本生産の指導も行います。
被っていただけるお客様はもちろん、生産する人達のことも考えて初めて「帽子のデザイン」ができあがっていくのではないだろうかと思います。

春夏素材では衣料と比べシャリ感を表現したいため、ラミー糸を使用したオリジナル生地などの素材開発をしています。
秋冬素材では丸く柔らかい女性らしさを帽子に表現するため、柔らかく優しいタッチの素材などを選びます。

布帛帽子は型くずれしにくいよう、また洗濯でシワになりにくいよう、生地に薄いトリコット素材を貼る加工を施しています。帽子はお客様ご自身で洗濯できてもアイロンがしにくい立体のため、型が復元しやすいように設計しています。

シーズンテーマを基に素材の特徴を生かしながらイメージし、デザイン画を描いていきます。

ブレードやクリノールなどの帽子材料やファーボールなど季節感あふれるアイテムをトリミングに取り入れ、帽子に花を咲かせていくようにイメージを吹き込んでいきます。

CADを使用し帽子原型から増寸分解、結合しパターンを作成します。先に描いたデザイン画がどれだけリアルに描き込まれているかが重要です。
ブリムの長さ、角度、クラウンのボリュームやカッティングの高さ比率など絶えずデザインイメージを念頭において、ディスプレイ上の線、数値を確認しながら操作します。

カッティングプロッターでプロトパターンがカットされて出てきます。
実際に自分で裁断、縫製してイメージ通りか問題ないかチェックします。
まずはパターンが正確か寸法に誤差がないか、不織布でプロトタイプを作成し縫いながら確認していきます。

次に実際に使用する生地で作ってみます。
不織布では気付かない「地の目による視覚的な見え方の違い」、「織り組織により生じるタテジワ」、「生地分量の見え方」など色々な問題点がわかります。
基本パターンより材料に合わせたパターンへとCADで微調整を行います。

本生産前に本社工場内で約60pcsの“模擬量産”をします。
各工程全員チェックシートに記入しながら作業を進めます。ここで裁断、縫製、箱詰の問題点を現場の人達と改良点などを相談して、マニュアル作成用のデータを整理します。
実際に生産してみると多くの問題点が発見され、毎回現場経験の重要さを痛感します。

本生産に向け、各工場向けに生産マニュアルを作ります。帽子本体の縫い方は勿論、アクセサリーの作り方、留めつけ方などもこの一冊でわかるようにします。
特に注意する点については、実際の不良見本をつけて文字ではなく、画像でビジュアル的に分かりやすく説明します。加工先は日本、中国、ベトナムなど様々です。生産地に合わせ英語表記、中国語簡体字表記しなければならないので専門用語辞書と照らし合わせながら作ります。

原材料、付属類、マニュアルを工場に送り、現地へ出張して実施指導します。マニュアルや口頭では表現しにくいアクセサリーの作り方などは重点的に指導します。
現場の人達からの提案で「ここはこうすれば作業的に簡潔になるよ」など教えられることもあり、数多く生産を手掛けている現場の知恵と相談しながらモノ作りをします。
そして次のデザインへの貴重な経験となっています。

国内製、海外製問わず製品は出荷前に再び検針、型入れによる検品作業を行います。
ベレーなどの型は、輸送中やお客様での保管中に型崩れがしにくいようにライスペーパーを入れて形状保持します。

型入れ作業は営業担当者も行います。営業担当者も出荷前に自分で検品することにより商品知識を深め、気がついた点は、デザイナーに報告相談しながら次の商品作りへと生かしていきます。

専業メーカーとして、素材開発から始め、布帛、帽体、ブレードなど実際の生産をふまえ改良し設計していくように心掛けています。
生産を前提とした素材作りはデザインのスピード性も高められることもできます。
工程をふまえたものは、またそこから問題点や課題が生まれ、新たな開発が必要になります。
帽子専用材料形態として帽体があるように、あらゆる材料となる中から帽子に適した材料を開発し、被られたお客様の満足いく帽子を提供できる専門メーカーとして挑戦し続けていきたいと思っております。